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小説 野性時代
2021年12月24日 12:00
◀最初から読む◀前回のを読む いやいや、そんな馬鹿な。 光弘は頭から地下室のことを追い出し、書類を集めて束にした。それを鞄に入れて仕事のことは忘れ、ダイニング・テーブルに一人座ってソーダ水を口にすると、心も体もリラックスするのを覚えた。 家族が寝たあと、一人でこうしていると妙にほっとするのはなぜだろう。穏やかで、やるべきことをやり終えたあとのような満足感もある。確かに、こういう気分でなら
2021年12月20日 12:00
◀最初から読む◀前回のを読む「悪かったな、付き合わせて。そろそろ寝たほうがいいんじゃないか」「そうする。あなたは寝ないの?」「これを片づけたら寝るよ」 光弘はテーブルに広げられた書類のほうに顎をしゃくって言った。 美世子がうなずきながら、遠くにあるものでも見るように書類を眺めた。「会社に戻ったとき、私の仕事あるかな」「そりゃあるだろう。部署でも頼られてたのは間違いないんだから」
2021年12月17日 13:00
◀最初から読む◀前回のを読む第2章 たまい1「あっ。これって、工事費だけじゃなく、そのあとの維持管理費も入ってるのね」 美世子が言った。赤ペンを持ったまま印刷された数字を目で追い、かと思うと、さっと線を引いた。 光弘が覗き込もうとすると、美世子が書類をこちらへ向けてくれた。見ると契約期間が『二〇四五年六月末日』までであることを示す欄に、赤くアンダーラインが引かれている。「本当