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【特別掲載】冲方丁『骨灰』

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得体の知れない怪異と不条理が襲いくる――。鬼才が放つ、戦慄の長編ホラー。 『天地明察』『十二人の死にたい子どもたち』「マルドゥック」シリーズ。 ジャンルを超越しベストセラーを生み… もっと読む
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2022年1月の記事一覧

祭祀場の持つ意味に近づく光弘だったが――。 「骨灰」#24

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 ひとしきりそんな歓待の言葉があってのち、
「菅原所長からご連絡を頂きまして。祭祀場で何かあったとか」
 おもむろに社長の玉井が本題に入った。
「あ、はい。東棟の地下室は、御社が管理されていると伺いまして」
 光弘は鞄からタブレットを取り出すと、あらかじめ用意しておいたファイルを開き、地下の神棚や、四角い穴の画像を読み出して彼らに見せた。
 社長の玉井が深々とうな

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光弘は、祭祀場の管轄をする玉井工務店を訪れる。 「骨灰」#23

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 行き先は秋葉原だった。駅を下りて、携帯電話で地図を見ながら雑居ビルが並ぶ河岸付近の通りを進み、該当するビルに入った。一基だけあるエレベーターに乗る前に、竹中に電話をかけ、これから玉井工務店の事務所に入ることを告げた。
「じゃ、一時間後にな」
 竹中の後方支援を頼もしく思いながらロビーの表札を確認し、エレベーターで四階に上がった。
 外廊下に出ると、天井と手すり壁

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「見えないお客さんもいってらっしゃい」。娘の一言が頭に残る。 「骨灰」#22

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 光弘は通りを渡ろうとした足を止めて振り返った。
「え?」
 だが咲恵はこちらに背を向け、同じ帽子をかぶった子どもらがいるほうへ行ってしまった。
 光弘はしばしその場に佇んだが、すぐにかぶりを振り、自分の両肩の辺りを交互に見て苦笑した。見えないお客さんか。朝の陽光が降り注ぎ、大勢が行き交う通りでそのフレーズを思い出したところで、何の不安も感じなかった。
 妙なこと

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